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網点のこと--写真を印刷する方法

 網点というのは平版で濃淡を表現する方法です。オフセット印刷と通称される印刷の版に凹凸がないので平版と呼ばれます。美術工芸では平版にもいろいろありますが,工業としてはPS版,シルバーマスター版,近年はサーマル版,シルバーデジプレートなどが使われています。いずれも画線部の形成方法が違うだけで,濃淡部に網点を使うことは同じです。
 印刷物をルーペなどで拡大すると,網点は次のように見えます。
網点の様子 大きさの異なる点(左の例では四角や円)が均等に並んでいます。点が大きいところは暗い部分で,点の小さいところは明るい部分です。デジタルではこの円がややガタついています。またカラー印刷ではC(シアン−青)M(マゼンタ-赤)Y(イエロー-黄)K(ブラック-黒)の4つの点が重なりあっています。
 テレビも点の集まりですが,こちらの点の大きさは一定です。明暗は光の強さで表現しています。平版印刷ではインキの濃淡によって明暗を表現することはできません。そこで考えられたのが網点です。
 アナログ製版時代はコンタクトスクリーンというフィルム状のものを感材にかぶせて,網点を作っていました。コンタクトスクリーンは実によく考えたもので,見た目は等間隔の点のようなフィルムですが,点の中心部が透過しづらく周辺は透過しやすくなっており,光の強さを点の大きさに換えることができます。写真フィルムのように中間の濃度を表現できるフィルムでは,ぼやけた点になってしまいますので,製版用のフィルムは黒と白(透明)がくっきりとするように作られており,ぼやけない網点が生成されます。
 デジタル製版はアナログの方法を次のように摸しています。
 画像を小さなブロックに分けて濃度を測ります。この値によって点を描きます。デジタルなので細かい点(例えば3000dpiでは0.0085mm)を打ちます。縦横16個の四角を最大として中央から点を128個えがくとちょうど1/2の点の大きさになります。それだけでは画像をきれいに見せられないので,前後左右のブロックも参考にします。だから印刷線数の2倍以上の解像度が必要と言われているのです。
 線数というのは網点の密度です。オフセット印刷によく使われていいる線数は175線ですが,これは1インチ当たりに網点が175個あることを言います。
細線に色を付けてはいけない。
図やグラフを縮小貼り付けすると
線が細くなる。
エクセル表の細線は0.1mm以下。
 ここで面白いことがわかります。網点の大きさは175線では0.145mmが最大です。グレーの0.1mmの線は点線になってしまいます。細線にグレーや色を指定すると点線になって印刷されます。画面では網点ではなく光の強さで表示していますので点線には見えません。プリンターでは解像度が低いので細い線は太くプリントされます。
 カラー印刷は4色しか使わないのに多色印刷できます。これは濃度のちがう網点を重ねて印刷して実現しています。ほとんどの色は網点が混じっています。網点なしで印刷したい色は練り合わせたインキで,別に刷り込まなければなりません。
 今までの説明の様な,網点が均等に並ぶ方式をAMスクリーンと呼んでいます。このほか,FMスクリーンというのもあります。ラジオ放送みたいですが,濃度を表現するのに網点間隔を均等でなく,暗いところは間隔を狭く,明るいところは網点間隔を広げて,より濃淡が豊かに印刷されるように工夫しています。メーカーの説明では諧調が豊かになる,モワレが出ない,細線が切れない,インキをセーブできるなどといいことづくめですが,残念ながら,印刷管理も難しく,どのような場合にも効果が発揮されるという訳ではないようです。
AMスクリーンとFMスクリーン
大日本スクリーンホームページより

 また疑似網点と呼ばれる方法もあります。点の形を四角や丸ではなく,細い線や線の重なりなども使って濃淡を表現しようとするものです。これは解像度が低いプリンターで使われています。

 以上の説明はとても単純化したモデルです。実際にはアナログでもデジタルでも視覚的に綺麗に見える結果を得られるよう緻密に検討して作られています。アナログもデジタルも平版オフセットの原理基本は変わっていません。平版オフセット印刷の特徴を理解してDTPオペレーションに役立ててください。


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